



------祐天寺にはどのくらいお住まいなんですか?
生まれてからずっとだから、もう60年以上になるかなあ。
祐天寺に来たのは戦後になんだけど、
ひいばあさんのときは三田の慶応の近くに家があって、
福沢諭吉がよく遊びに来てたみたいだよ。
ウチは元々は武家だったんだけど、明治維新で失業しちゃったから、
クリーニング屋、染色・染物屋を始めて、
祐天寺に住むようになってから呉服屋を始めたんだよ。
あの頃は、服が色あせるとまた染め直して着てたし、
モノが無い時代だったから、毛布を染め直して背広に仕立て直したりもしてたね。
今はモノがたくさんある時代だから、誰もそんなことしなくなっちゃったけど。
-------60年過ごしている祐天寺で、印象的な出来事はありますか?
僕がまだ小さい子供だったころは、
夏になるとお相撲とかやってたよ。
遊ぶところなんてないじゃん?
だから、商店街をちょっと入ったところに
土俵を作って大人たちが相撲を取ってた。
大人がだよ?
それを皆で見てたんだよ。のん気だよな(笑)



------実際に着物を着ているのはどういう人たちなんでしょうか?
ウチは、成人式や結婚式、パーティーでの着物のレンタルをメインでやってるけど、
最近は男の人の方が着物を着たいと思うようになってきてるね。
昔はレンタルなんてなかったから、成人式の時には親がお祝いに作ってくれたりなんかしてたけど、
今はもうそういうのないでしょ?特に男はね。
でも、最近は若い人もリサイクルで買ったりなんかしながら、着物を着てみたいって人が増えてる。
今は日本的なモノがおもしろいって思われてる時代なんじゃない?
一番新しく見えたのが、今まで何も知らなかった日本なんじゃないかな。
僕が着たいと言ってる着物も、銀座とか青山とかそういう山手の街で似合う着物を
提案したいわけですよ。
今の生活を見ても、コンクリートに囲まれてるわけだから、
その中で似合う着物っていうのをね。
京都では、土と泥と紙の文化で、自然光の中で映える着物なんだろうけども、
僕はビルや蛍光灯の中で映える着物、という考え方。
銀座や青山の街をさ、色の薄い着物なんか着て歩いてると、そりゃかっこいいよ。
------着物の好きなところはどこですか?
洋服にはない縦列を感じるところかな。
これはおじいちゃんが着てたものだ、とか。洋服は形が変わっちゃうからね。
あとは、日本の自然のリズムと一緒に生活していくっていうのは好きだなあ。
せっかく美しい四季があるんだから、
自然と一体になるよろこびを感じてほしいよね。
月に思いを寄せるとかさ。狼男じゃないけど(笑)

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深谷さんが着物を着るのはどういうときですか?
外出するときには大体着てるけど、やっぱり歌舞伎を見に行くときには必ず着るよ。
僕は歌舞伎が好きなんだけども、着物を着て歌舞伎を見ると
もうその当時の時代に戻ったような感覚が味わえるよね。
日本だけだからね、もう150年以上も前の服が未だに残ってるのは。
------歌舞伎の他に深谷さんが好きなものは何ですか?
それはもうジャズだね。
今の目黒区役所の場所は、昔は進駐軍の子供たちの学校だったんだよ。
昭和35年くらいまで立ち入りできなかったんだけど、
その学校から聞こえてきてたのがジャズなのよ!
青春だなあ。それでもうジャズにはまってね。
今は年に1回場所を借りて、ジャズバンドを呼んでコンサートをやってるよ。
去年なんて皆集まっちゃって、立ち見も出るくらいだったんだから。
今年は9月に中目黒GTでやるんだけどね。
オールドジャズのようにメロディのきれいな音楽を
もっと若い世代の人にも聴いてもらいたいね。
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深谷さんは丁稚奉公で修行をした最後の年齢層とのことですが、
その時のお話を聞かせてもらえませんか?
僕は22~25歳の間、新宿のお店まで通いで行ってたんだけども、
住み込みの人は店の廊下で寝させられるんだよな。泥棒よけで(笑)
反物を組んである通路に一番若い丁稚が寝てるわけだよ。そうすると泥棒も入れないじゃん?
店で寝てると家賃とかもかからないし、それで親に仕送りとかしてたよ。
それでも誰も文句は言わなかったなあ。
仕事の事は自然に覚えるから、とにかく礼儀作法を覚えて帰れって言われてね。
「仕事のできる人間」じゃなくて、「人を育てる」っていう気持ちが強かったと思うよ。
仕事の面では、仕入れ先から、お客さんの所、加工所と
皆に連れて行かれるから、一通りトータルで覚えられたしね。
あとは、仕入れ先にも丁稚がいるわけだから、
一緒に成長していくと後々チカラを貸してくれるわけ。
僕が入ったときも、いきなり採寸されて、親父さんが背広を仕立て上げてくれたりするんだよ。
まだ仕事なんて何にもできないのにだよ?
古いところで習ってきた人ほど、そういうのを大事にするよね。自分がされてきたから。
そういう意味では、昔の丁稚奉公は、人とのつながりの強さを持ってたね。

------印象的なお客さんの話などありますか?
結婚式で新郎に、黒いシルクハットに、シルバーグレーの着物と羽織で袴を履かせてさ、
それで首に白のふわ~っとしたヤツつけて、ハリウッドスター並みにしたんだよ。
そしたらもう喜んじゃってさ(笑)
式が終わっても全然脱がないんだよね。気に入っちゃって。
人生で一回しかない事だから、夢のような一日にしてあげたいじゃん?
それが僕の願いなのよ。
新婦さんに「あんたの方が目立ちすぎる!」なんて言われてたみたいだけど(笑)
本当は、白地に金のラメを入れて、
光が当たるとキラキラッてなるようなのを作ってみたいんだよ。
それでいて嫌みがないようなヤツをね。
あとは、黒人の人にうぐいす色を着せて、こげ茶色の袴を履かせたのも、
すごいかっこよかったよ。
人生には自分のお祝い事なんてあんまり回数無いんだから、
一日くらい皆スターになってもいいじゃんなあ?(笑)

テレビやCM、映画への衣装提供を行う他にも、
FM東京でホームレスの支援活動を行っているという深谷さん。
呉服屋さんに入る事なんて滅多に無いので、
始めは敷居が高いんじゃないかな、とか思っていたのですが、
深谷さんの人柄とお話で時間を忘れて楽しんでしまいました。
着物の話だけでなく、日本の歴史、もちろん祐天寺界隈の成り立ちについても
非常にわかりやすくお話しして頂きました。
歴史に興味のある人は深谷さんにお話を聞いてみるのがいいかもしれませんね!
楽しみついでに、このU助も着物を着せてもらってしまいました。
初めての着物はとても着心地が良くてクセになりそうでした。
来るべきU助の晴れの舞台には、深谷さんに相談に行ってみます!


呉服屋 深谷

住所:〒153-0052 東京都目黒区祐天寺2-6-14

TEL:03-3712-2922

営業時間:PM10:00~AM20:00 木曜定休

URL:http://fuuryusi.cool.ne.jp/shopindex.htm/

ここでも深谷さんの思いが読めます。


